ChatSenseの社内RAG利用状況の一括出力が変える生成AI運用と改善の進め方

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ニュースの概要

エンタープライズ向け生成AI基盤「ChatSense」に、社内RAGがどの程度使われているかをまとめて出力できる機能が加わりました。個々の利用者が検索した記録を確認するだけでなく、組織全体の利用傾向を把握しやすくする仕組みです。社内文書を参照して回答するRAGは、導入しただけで価値が生まれるものではありません。どの部門が使っているのか、どんな質問に活用されているのか、参照されない情報は何かを継続的に確かめる必要があります。今回の機能は、生成AIを試験導入から業務基盤へ移す際の観測性を高める一歩といえます。

引用元: エンタープライズ生成AI基盤「ChatSense」、社内RAGの利用具合を一括出力する機能を実装(PR TIMES)

分析・見解

利用回数だけでなく業務短縮効果まで見る指標を

生成AIの導入では、モデルの性能や回答の流暢さばかりが先に評価されがちです。しかし企業で本当に問われるのは、登録した社内情報が業務の中で実際に使われ、意思決定や作業時間の削減につながっているかどうかです。RAG(社内の文書を検索して回答に活かす仕組み)の利用状況を一括で出力できるようになると、導入の効果を会話の印象ではなく、部門別・期間別のデータで議論できるようになります。

ここで大切なのは、単純な利用回数を成果と取り違えないことです。例えば月間の検索数が1万件あっても、回答を読んだ後に利用者が社内ポータルへ戻っているなら、検索結果が足りていない可能性があります。反対に利用回数が少なくても、経理の月次締めや法務の契約確認といった定型作業を短縮できているなら、投資効果は高いといえます。見るべき指標は、利用者数、再利用率、質問が集中する分野、回答後に追加質問が来るかどうか、参照した文書の種類、そして未回答や低評価の割合です。可能であれば、RAGを使った業務と従来の手順とで所要時間を比較し、削減できた時間を金額に換算することも有効です。

検索の部品から運用の対象へ格上げされるRAG

この機能が持つ技術的な意味は、RAGを検索の部品から運用の対象へと格上げする点にあります。これまでは、文書を登録して検索できれば導入は完了とみなされることがありました。しかし実際には、文書の更新漏れ、重複した規程、権限設定の不整合、質問に対して細かく分割しすぎたデータなどが、回答の質を左右します。利用状況の集計は、どの情報にアクセスが集中しているかを知る手がかりになり、更新の優先順位や文書の構成を見直す材料になります。質問は多いのに参照される結果が安定しない分野は、検索の設定だけでなく、元になる文書の書き方そのものを見直す必要があります。

使われない文書こそ知識の流通を映す診断材料

独自の視点として、利用されていない文書も重要な診断材料になります。アクセスが少ないからといって不要とは限りません。社員がその文書の存在を知らない、題名から中身を想像できない、権限の設定によって検索の対象から外れている、といった理由が考えられます。利用の統計は人気ランキングではなく、社内の知識がどう流通しているかを映す地図として読むべきです。例えば人事部門の規程ばかりが検索され、現場の手順書が使われていないなら、現場の質問が別のチャットや口頭での相談に流れているのかもしれません。

個人監視にしない設計と改善サイクルの速さが鍵

一方で、利用状況の出力には慎重な設計も必要です。質問の内容には個人情報や機密情報が含まれるため、管理者向けの集計と、個人単位の監視とを明確に分けなければなりません。保存する期間、閲覧できる権限、匿名化する範囲をあらかじめ決め、評価を人事査定へ直結させないことが、利用を促す前提になります。今後は利用量だけでなく、回答の正確性、参照元の妥当性、業務の成果までを結び付けた評価が求められます。RAGの競争力は検索の技術だけでなく、改善のサイクルをどれだけ短く回せるかで決まります。

ビジネスへの影響

月次の運用会議に組み込み部門別の利用実態を可視化

企業の意思決定者が最初に確認すべきなのは、全社展開を急ぐことではなく、利用状況を見て改善できる責任者がいるかどうかです。ChatSenseの出力を月次の運用会議に組み込み、部門別の利用者数、質問の多いテーマ、回答に不満が出た領域、参照文書の更新日を並べるだけでも、投資判断の精度は上がります。導入前に三つから五つの重点業務を決め、例えば問い合わせ対応の時間を二割減らす、同じ規程への質問を半分にする、といった基準を置くと評価がしやすくなります。

利用が少ない部門を責めず一か月分の質問を分析

実務では、利用が少ない部門を失敗扱いしないことが大切です。利用者向けの研修が足りない、質問の入力例が分からない、文書の権限設定が厳しすぎるなど、技術以外の原因であることが多いためです。まず一か月分の集計から質問を分類し、上位十テーマについて文書の題名、更新日、回答例を見直します。その後、改善の前後で再質問率や処理時間を比較します。費用の面では、利用量の増加にともなう推論の費用だけでなく、文書整備や監査に必要な人件費も含めて総額を管理すべきです。

個人監視に使わないルールを先に定め改善体制を維持

また、利用ログを個人監視の道具にしないルールを先に定める必要があります。管理者には集計値を中心に見せ、機密性の高い質問は権限を分けて扱います。RAGは一度導入して終わりにするのではなく、業務部門、情報システム部門、法務や監査部門が定期的に見直す体制を作れる企業ほど、導入の効果を長く維持できます。

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